ラグタイム2号店

話をしている静絵は、とても苦しそうだった。

黒曜石のような瞳には涙が浮かんでいる。

「兄には幼い頃からいろいろな習い事をさせて、そのうえ予備校にまで行かせていたのに対して…私はピアノと習字を習わせただけで後は何もしれくれませんでした。

勉強ができないから塾に行きたいって言っても、“女に学問は必要はない”って一蹴をされました。

1度だって、家族は私の希望を通してくれたことはなかった。

今通っている学校だって、母と祖母が卒業生だったからと言う理由で強制的に入学させられたんです…」

静絵は両手で顔をおおって、肩を震わせた。

「私だって兄のように愛されたい…。

なのに家族は兄のことばかりを気にかけてて、かわいがってて、愛されてて…」

「――静絵」

俺は彼女の頭のうえに手を置いた。