体育祭当日。

晴天。暑い。
まだ5月終わりだというのに、暑い。

朝から女子たちの日焼け止め塗り大会が激しい。

私はなんとか体育祭には復帰。
出る競技はほとんど無いのだけれども、見てるだけでよかった。

先輩の背中を間近で見ることができるのも今日で最後か。

先輩の顔には赤いポスカで書かれたたくさんの言葉。

長いハチマキをまいた姿。

どれもこれも似合いすぎている。

赤団には、矢野先輩と同じスタメンの悠介先輩の姿もあった。

もちろん、この2人は女子からも、男子からも注目を浴びていた。

一つ上の先輩はかっこいい。
気のせいかな。
そんな先輩方には常時、女子からの黄色い声援が飛び交っていた。
私もその1人。

でも私が見ていたのはあなた。
汗をかき、すごく大きな笑顔を見せていた。

たくさんの人を誰にも負けず応援していた。わたしもその声に励まされてきた。


学校中の視線が集まる競技、4×100mリレー。
先輩は本当にすごかった。

練習を見ていたからか、少し感動した。

ましてや、その姿を何度も見ているわたしはなんて幸せ者なのだろうか。

バスケをしているときに見せるあの真剣な目つきと飛び抜けた速さ。
全ての人を魅了しただろう。

その100m走で先輩達は学校の歴代新記録をだした。その記録は先輩の中の新記録でもあった。

泣いて喜んでいた。美しすぎる涙だ。

わたしは勇気を振り絞って、先輩に伝えに行った。これまでにないほどに緊張していた。
「おめでとうございます」

「ありがとう!」
先輩のこんなに大きな笑顔を見たのは初めてだ。
一瞬、胸の高鳴りを感じた。
あれ、ドキドキがおさまらない。

輝きに満ちた時間は本当にすぐ終わってしまった。

結果、赤団は優勝。
先輩は誰よりも喜んでいたと思う。
わたしも全力で喜んだ。

また、今日、新しい先輩を知った。







そして、わたしは先輩に恋をした。