「関根さん!」

誰…?

恐る恐る後ろを振り向く。
顔は真っ赤なんだろう。

えっ、嘘でしょ!矢野先輩?!

「あ、はい!どうしたんですか?」

走ってきたのかな。相当息切れしてる。
「これ!拓海にわたしておいてくれない?」

渡されたのはユニフォーム。綺麗に畳んである。
そうか、明日バスケ部の2年は試合なのか。

「朝練のとき渡すの忘れちゃって!クラス同じだよね?頼む!」

幸運すぎる。神様ありがとう!

「わかりました!任せてください!」

先輩、すごいダッシュで教室向かったな〜。忙しい人。

私、1年学校で過ごしてきたけど、先輩とこうやってちゃんと話したの初めてかもしれない。


あの至近距離で顔を見た。遠くで見るよりも顔は整っていて、身長はやっぱり高い。よく見ると少したれ目で、肌の色は黒め。笑った顔がすごく綺麗。
目元が好き。
すごくいい匂いがした。落ち着いた。

先輩、6番なんだ。

先輩のことを少し知った日だった。


そして、先輩のことを特別に想った日だった。