2学期が始まった。

学校は文化祭の準備で大忙し。

歌の練習をしたり、打ち合わせをしたり。

矢野先輩は実行委員長らしい。

後に後悔した。わたしも実行委員やっとけばよかった。

クラスの実行委員の友達が矢野先輩と楽しそうに話しているのをみて嫉妬した。


どうやら先輩はオタ芸を打つそうで。笑
ちょっとぽくないなって思ったけど、それがそうでもなくて笑

先輩がやるとなんでもかっこよく見えるだけなのかも。

こういう時にせっかく忘れてた先輩への気持ちが溢れそうになる。


文化祭はもちろん大成功。
そしてもちろんわたしと矢野先輩の関わりはなし。

当然なんだけど、文化祭にいる先輩の姿を見るのはこれで最後だから少しさみしかった。



片付けをしていると最近仲良くなった田中先輩に呼ばれた。
そんなイケメンじゃないし、スタイルがいいとかおしゃれとかそういうのでもないけど、性格は悪そうじゃない。


「今日カラオケ行かない??」

いきなりだったから驚いたけど、ちょうどいいストレス発散だと思った。

どうやらメンバーは先輩ばかりのようで、なんで私が呼ばれたかわからなかった。

先輩方と仲の悪いわけではなかったし、その時は田中先輩がそんなに悪い人だとは思っていなかった。
ただ少ししつこい人。


メンバーは私と、田中先輩と、校内のラブラブカップルで有名な中村先輩と栞奈先輩。

中村先輩は矢野先輩と並んで学校1位、2位を争うかっこよさ。
が、彼女がいるからって諦める人が多いのが矢野先輩との違い。
まあこの間まで矢野先輩にも可愛すぎる彼女がいたけど(笑)
矢野先輩とは系統が違うかっこよさ。
中村先輩もバスケ部で、スタメン5人からも信頼される6th man。

栞奈先輩はバレー部の先輩。いつも後輩の悩みを聞いてくれる優しい先輩。
そして目がくりっとしていて大きくて可愛い。

美男美女のお似合いのカップルだ。

私は先輩がいるからと思って気合を入れて行った。
いつもより露出度の高い服に、メイク。赤い口紅が目立っていた。
少し緊張した。


駅前のカラオケに行くと先輩たちはもう歌っていた。

中村先輩と栞奈先輩はいちゃいちゃしてるし、どうすればいいかわからない

田中先輩は歌っていた。
「告白」を歌っていた。
こういうの歌うんだなー

わたしは倖田來未とか加藤ミリヤとか。
歌は嫌いじゃない。

田中先輩は恋愛ソングばかりだ
「キセキ」「go for it」

??????
まあただの趣味か。

でも中村先輩と栞奈先輩がさっきっからよそよそしい。

1時間くらい4人で歌っていると、田中先輩に外に来いと呼び出された。


嫌な予感。

既に外は真っ暗。

目の前には田中先輩。


「俺、優のことが好きだ。付き合って欲しい。絶対幸せにする」


なんで気づかなかったんだろう。
あの恋愛ソングもいままでのアプローチもこういうことか。


そう考えるとどこか生理的に受け付けられなかった。

「ごめんなさい。」

どうしても無理。
絶対やだ。

「まって、もう少しだけ考えてみて?俺、自信あるんだ。」

わけわかんない。
しつこい。めんどくさい。


わたしはお金だけおいて逃げてきてしまった。


家に帰って、震えが止まらなかった。
涙が止まらなかった。


時間は夜8時。

中村先輩から電話があった。
出るか迷ったけど、急に抜けてきちゃったし、申し訳なくて出るしかなかった。

「もしもし?関根さん?今大丈夫?」

「あ、はい。大丈夫です。」
なんか後ろでざわざわ聞こえるんだよなぁ

「わかった!ちょっと待ってて!!」

向こうの電話の主が変わった。
「もしもし、田中です。今日ごめんね?でも俺、本気だから!お前を幸せにできる自信がある。」

こわい。こわい。こわい。こわい。
いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。


何も言わずに私は電話を切った。
怖くて怖くて仕方がなかった。

何回も何回も電話がなった。もちろん全部中村先輩からで、中身はすべて田中先輩なのだろう。

出たくなかった。でもしつこくて、結局出てしまった。

「無理です。ほんとにむりです。しつこいです。やめてください。」


それだけ言って電話を切った。

後からLINEを開くと田中先輩からたくさんのメッセージがきていた。

なんてしつこい人なんだろうか。
気持ち悪い。


カラオケに行くことを悠介に話していたので、悠介から連絡が入っていた。

「カラオケどーだった?」

「逃げてきちゃった。」

「え、なんで?」

悠介だから、ちゃんと打ち明けられた。
この時一番信頼していた存在だった。

「田中先輩から告白された。なんか怖かった。嫌だと思った。」
「しつこくて、ほんとにいやだ。」

「大丈夫か?泣いてんの?」

「泣いてない。」
私はすぐ嘘をつく。


悠介は絶対なんかもってるよね。
嘘ついてもすぐ見抜くし、すぐ勘づくし。

「泣いてないのか。泣き虫なのにね。」
私はなにかあるといつも悠介の前で泣く。
心を許してる。

電話が鳴る。

悠介から電話か。
助けてくれるかな。

「もしもし?やっぱ泣いてるじゃん。」

「うるさい、泣いてない。」

そうやって助けられるとなんか涙が止まらない。

もう何回目だろう。なんやかんや言いながらいつも助けてくれるんだよね。

「こわい。助けて。」

「大丈夫、大丈夫だから。あいつはそういう奴なんだ。ごめんな。」