「とりあえず、花奏のお願いだからキスは止めとくよ。」


「うん…!」


よ、良かった…。


「そんなに、あからさまに安堵した顔されんのも、ちょっと複雑だけど、まあ…いっか。」


胸を撫で下ろす私を、眞紘くんは苦笑いしながら見つめた。


「そ、そろそろ私たちも教室に戻ろっか!次、移動教室だし…。」


ぎこちない動きで立ち上がる。


屋上の扉に向かって歩き出した時、後ろからギュッと抱きしめられた。


「もう少しだけ…二人で居たい。」


耳元で囁かれた私。


危うく手に持っていたお弁当箱の入っているバッグを落としそうになった。


「で、でも授業が……」


「あと少しだから…。」


それって、どれくらい?


もう、体中の血液が沸騰して気絶しそう。


今にも飛びそうになる意識を保つのに必死だ。


眞紘くん、こんなに雰囲気が甘い人だったなんて…。


これじゃあ、いくつ心臓があっても足りない気がするよ…。