いつもと同じ時間、同じ車両。

私と翼くんは並んで座っている。

半年前は、まさか彼女になれるなんて思ってもみなかった。

「今日は、何を読んでるの?」

「ん?恋愛小説」

「えぇ?」

「今流行ってるって、クラスの女子が言ってたから」

「……面白い?」

「んー……まあまあかな」

「へー」

「色々参考にもなるし」

「参考って、どんな?」

「例えば……」

そう言って翼くんは私の顔を引き寄せ、小説で隠しながらキスをした。

「なっ!」

「こんなんとか?」

真っ赤になっている私を見て、ニヤニヤしている。

「……今度、私にも読ませて」

「いいよ」


タタンッ…タタンッ……。


いつもと同じ時間、同じ車両。

何気ないこの空間が、特別になっていた。



        ━End━