学校にいくための用意を済ませ
「いってきます」
と玄関の扉に手をかける。
「いってらっしゃい、気をつけてね」
お母さんの優しい声が後ろから聞こえる。
まだ眠い目を擦りながら学校へと向かう。
春はあけぼの、って誰が言ったっけ
そんな事を考えながら歩いていた。
春の空は白い。
快晴で雲一つ無くても空は白い。
''青い空''という言葉は似合わない。
そんな空にふぅっと息を吹きかける。
俺の息はもう目には見えなくなっていた。
学校にいる時間はあっという間で
気がつけば帰りのHRだった。
「放課後どこ行く?」
「新しく出来たお店がさぁ……」
クラスメイトは放課後の思い出作りに一生懸命頭を悩まし、各々取り繕ったような笑顔を顔に貼り付け教室の外へと向かう。
『今日もあそこにいるのかな』
教科書をカバンにしまうと急いで靴箱へ向かいある場所へと足を運んだ。
チリンチリン。
「いらっしゃいませ。あ、ユウくん!今日も来てくれたのね、さぁ座って座って」
俺の放課後の過ごし方は家と学校の中間にある「探し物」というちょっと変わった名前のカフェで音楽を聞きながら勉強したり、常連さんと他愛のない話で盛り上がったりすることだ。
ここは高校一年の秋頃に見つけて、高校三年になった今でも通い続けている。
「ユウくん、何飲む?」
「あー、えっと、ミルクティお願いします。あ、ホットで」
「かしこまりました」
ここのオーナーの池田さんと呼ばれる女性は俺に優しく接してくれて、ユウくんは息子みたいなもんよといつもふわりと咲いた花のような笑顔を向けてくれる。
「あの、池田さん。今日もあの子はココにきますかね?」
「んー、どうだろうね。来ると思ってたら来るんじゃないかな?あの子、気まぐれだからさ」
高校生二年の終わり頃、いつもは放課後に立ち寄るこのカフェにいつもより遅い時間に来たときに、ふとある女の子が俺の目に止まった。
その女の子は背が低くて髪が綺麗な黒でストレート、少し華奢な容姿で彼女が着ている制服はここらでも有名な進学校だった。彼女の名前は『ナオ』というらしい。カフェが閉店するギリギリまでいつもミックスジュースを飲んでいて、池田さん曰く帰りはフラフラ散歩てから帰るというとても、不思議な女の子だ。
ミックスジュースを飲みながら何枚もの写真をにらめっこするかのようにじぃっと見つめては絵本サイズのスケッチブックに貼り付けて隣のページに何かボソボソと書いている。
今日こそ、彼女に話しかけようと心に決めてやって来たのだ。
今日出された課題を進めていると辺りは暗くなっていた。赤でもない橙でもない白でもない黒でもない、何色でもない空に赤いリンゴみたいな太陽が姿を消したあとの静けさはどこか寂しい。
チリンチリン。
カフェの扉のベルが鳴る。
そちらに目をやると、待ちに待った彼女が姿を現した。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは」
「ミックスジュース、でいいよね」
「あ、今日はココアにしてもらっていいですか?あったかいココア」
「かしこまりました。いつもの席、空いてるよ」
池田さんと軽く会話しいつもの席に腰をおろす。彼女の声はとてもあったかい。なのに、どこか寂しい。声だけで彼女の感情を読み取るのは難しい。でも、誰よりも優しくて耳の奥にスーッと入り込んでくるその声が俺は愛おしく感じる。
『よし、よし。』
スッと席を立った俺は迷いなく彼女の元へと向かう。両手でココアの入ったマグカップを包み、はぁっと小さなため息をこぼす彼女に声をかけた。
「あの…え、あの」
彼女の顔には?マークが浮かぶ
「えっと、隣いいですか?」
「はい、どうぞ」
そう言って彼女は自分の右隣の席を指さす。
席に座った俺は何から話そうかとグルグル頭を回転させ、まずは自己紹介からだと思い口を開く。
「長瀬 悠、です」
「ナガセユウ?漢字は?どう書くの?」
そう言って彼女はカバンの中からノートとボールペンを取り出し俺に渡す。
「長い、に瀬戸際の瀬。で、優しいじゃなくて悠久の悠だよ」
「へぇー、かわいい名前。なんか、まるっこい」
「あなたの…名前は?」
「ナオだよ。真実の真でナオ、珍しいでしょ」
あぁ、彼女にピッタリな名前だ。と、俺は瞬時に思った。彼女の目には嘘がないと感じる。真っ直ぐで真っ白でこの世の穢れが恐れて近づいてこないんじゃないかと思わせるくらい透明な目をしている。
「その校章の色、三年生でしょ。私の一個上だね〜、先輩」
「え、わかるの?あ、てことは高校二年生なんだ」
「うん、お隣のお隣の男の子がそこ通ってる。そう、華のせぶんてぃーんってやつですよいわゆる」
略語や流行りの言葉を使わなさそうな顔をしているが中身は割と普通の高校生なのかもしれない。なんでか俺はそれを酷く拒みたかった。
「ナオって呼んでください。私は長瀬くんって呼びます。今日、一緒に帰りましょう。良い散歩コース知ってるんです」
ナオは急にかしこまった敬語を使い、 返答する。なんだか急に寂しくなった。
その後特に会話を進めることはなく、俺はミルクティをナオはココアを飲んだ。いつもミックスジュースを飲んでいるナオを見ていたから少し違和感を感じる。
カフェが閉店時間を迎え、帰る支度をし、ナオとの散歩に向かった。
「あれ、背、高いんですね」
「あー、うん。178?くらいはある。多分」
「…多分」
少しニヤリと笑うナオの顔が可笑しくて釣られて笑ってしまった。
「はじめまして、ですね」
「はじめまして。これから、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
と深々と頭を下げるナオは少し幼く見えた。そして少し悲しそうな顔をした。
「どうかした?」
「んーん、何でもないです。ただ、はじめましてな気がしなくて、少し不思議な感じがするなぁって」
「どうかな、気のせいかも。それか、前世で会ってたとか?」
「わぁ、それは面白い」
と、つまらなさそうに呟くナオ。やっぱり彼女は不思議だ。
「さぁ、長瀬くん。歩きますよ、いっぱい」
「どれくらい?」
「うーんと、地球3周分くらいですかね」
「足とれちゃいそう」
「私がくっつけてあげますよ。今何時ですか?」
「八時」
「まだまだ夕方ですね」
なんて冗談を言いながら、ナオの後ろをついて行った。
「いってきます」
と玄関の扉に手をかける。
「いってらっしゃい、気をつけてね」
お母さんの優しい声が後ろから聞こえる。
まだ眠い目を擦りながら学校へと向かう。
春はあけぼの、って誰が言ったっけ
そんな事を考えながら歩いていた。
春の空は白い。
快晴で雲一つ無くても空は白い。
''青い空''という言葉は似合わない。
そんな空にふぅっと息を吹きかける。
俺の息はもう目には見えなくなっていた。
学校にいる時間はあっという間で
気がつけば帰りのHRだった。
「放課後どこ行く?」
「新しく出来たお店がさぁ……」
クラスメイトは放課後の思い出作りに一生懸命頭を悩まし、各々取り繕ったような笑顔を顔に貼り付け教室の外へと向かう。
『今日もあそこにいるのかな』
教科書をカバンにしまうと急いで靴箱へ向かいある場所へと足を運んだ。
チリンチリン。
「いらっしゃいませ。あ、ユウくん!今日も来てくれたのね、さぁ座って座って」
俺の放課後の過ごし方は家と学校の中間にある「探し物」というちょっと変わった名前のカフェで音楽を聞きながら勉強したり、常連さんと他愛のない話で盛り上がったりすることだ。
ここは高校一年の秋頃に見つけて、高校三年になった今でも通い続けている。
「ユウくん、何飲む?」
「あー、えっと、ミルクティお願いします。あ、ホットで」
「かしこまりました」
ここのオーナーの池田さんと呼ばれる女性は俺に優しく接してくれて、ユウくんは息子みたいなもんよといつもふわりと咲いた花のような笑顔を向けてくれる。
「あの、池田さん。今日もあの子はココにきますかね?」
「んー、どうだろうね。来ると思ってたら来るんじゃないかな?あの子、気まぐれだからさ」
高校生二年の終わり頃、いつもは放課後に立ち寄るこのカフェにいつもより遅い時間に来たときに、ふとある女の子が俺の目に止まった。
その女の子は背が低くて髪が綺麗な黒でストレート、少し華奢な容姿で彼女が着ている制服はここらでも有名な進学校だった。彼女の名前は『ナオ』というらしい。カフェが閉店するギリギリまでいつもミックスジュースを飲んでいて、池田さん曰く帰りはフラフラ散歩てから帰るというとても、不思議な女の子だ。
ミックスジュースを飲みながら何枚もの写真をにらめっこするかのようにじぃっと見つめては絵本サイズのスケッチブックに貼り付けて隣のページに何かボソボソと書いている。
今日こそ、彼女に話しかけようと心に決めてやって来たのだ。
今日出された課題を進めていると辺りは暗くなっていた。赤でもない橙でもない白でもない黒でもない、何色でもない空に赤いリンゴみたいな太陽が姿を消したあとの静けさはどこか寂しい。
チリンチリン。
カフェの扉のベルが鳴る。
そちらに目をやると、待ちに待った彼女が姿を現した。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは」
「ミックスジュース、でいいよね」
「あ、今日はココアにしてもらっていいですか?あったかいココア」
「かしこまりました。いつもの席、空いてるよ」
池田さんと軽く会話しいつもの席に腰をおろす。彼女の声はとてもあったかい。なのに、どこか寂しい。声だけで彼女の感情を読み取るのは難しい。でも、誰よりも優しくて耳の奥にスーッと入り込んでくるその声が俺は愛おしく感じる。
『よし、よし。』
スッと席を立った俺は迷いなく彼女の元へと向かう。両手でココアの入ったマグカップを包み、はぁっと小さなため息をこぼす彼女に声をかけた。
「あの…え、あの」
彼女の顔には?マークが浮かぶ
「えっと、隣いいですか?」
「はい、どうぞ」
そう言って彼女は自分の右隣の席を指さす。
席に座った俺は何から話そうかとグルグル頭を回転させ、まずは自己紹介からだと思い口を開く。
「長瀬 悠、です」
「ナガセユウ?漢字は?どう書くの?」
そう言って彼女はカバンの中からノートとボールペンを取り出し俺に渡す。
「長い、に瀬戸際の瀬。で、優しいじゃなくて悠久の悠だよ」
「へぇー、かわいい名前。なんか、まるっこい」
「あなたの…名前は?」
「ナオだよ。真実の真でナオ、珍しいでしょ」
あぁ、彼女にピッタリな名前だ。と、俺は瞬時に思った。彼女の目には嘘がないと感じる。真っ直ぐで真っ白でこの世の穢れが恐れて近づいてこないんじゃないかと思わせるくらい透明な目をしている。
「その校章の色、三年生でしょ。私の一個上だね〜、先輩」
「え、わかるの?あ、てことは高校二年生なんだ」
「うん、お隣のお隣の男の子がそこ通ってる。そう、華のせぶんてぃーんってやつですよいわゆる」
略語や流行りの言葉を使わなさそうな顔をしているが中身は割と普通の高校生なのかもしれない。なんでか俺はそれを酷く拒みたかった。
「ナオって呼んでください。私は長瀬くんって呼びます。今日、一緒に帰りましょう。良い散歩コース知ってるんです」
ナオは急にかしこまった敬語を使い、 返答する。なんだか急に寂しくなった。
その後特に会話を進めることはなく、俺はミルクティをナオはココアを飲んだ。いつもミックスジュースを飲んでいるナオを見ていたから少し違和感を感じる。
カフェが閉店時間を迎え、帰る支度をし、ナオとの散歩に向かった。
「あれ、背、高いんですね」
「あー、うん。178?くらいはある。多分」
「…多分」
少しニヤリと笑うナオの顔が可笑しくて釣られて笑ってしまった。
「はじめまして、ですね」
「はじめまして。これから、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
と深々と頭を下げるナオは少し幼く見えた。そして少し悲しそうな顔をした。
「どうかした?」
「んーん、何でもないです。ただ、はじめましてな気がしなくて、少し不思議な感じがするなぁって」
「どうかな、気のせいかも。それか、前世で会ってたとか?」
「わぁ、それは面白い」
と、つまらなさそうに呟くナオ。やっぱり彼女は不思議だ。
「さぁ、長瀬くん。歩きますよ、いっぱい」
「どれくらい?」
「うーんと、地球3周分くらいですかね」
「足とれちゃいそう」
「私がくっつけてあげますよ。今何時ですか?」
「八時」
「まだまだ夕方ですね」
なんて冗談を言いながら、ナオの後ろをついて行った。
