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「これが、私が成瀬君と付き合えない
理由です。」

そう言った上野さんの顔は今にも

泣き出しそうだった。

「私さ、まだ普通に振られて別れてたら
こんなんじゃ無かったんだろうけど…
だからどうしても、男の子から優しく
されたりするとさ~…ちらつくんだ~…
それに、成瀬君が、私に対して好きって
気持ちで接してくれてると思うと余計に…」

震える声で言った瞬間上野さんの目から

ぽろぽろと涙がこぼれた。

何て声をかけたら

良いのか分からなくて、俺はただただ

上野さんを見つめる事しか出来なくて

情けなかった。でも、決心が

ついた。そう思って俺はとにかく

ハンカチを差し出した。

「使って?」

そう言うと上野さんは戸惑いながら

もハンカチを受け取って涙を拭いて

くれた。