「ただいまー」

「お帰りなさい、って何?その花束…」

そう言われ私はそっとお母さんに花束を

渡した。

「えー、あーうん…貰ったー。」

「貰ったーってどうするの?これ」

「とりあえず、花瓶にさしといて…」

「えっ!ちょっと優羽!」 

私は母からの言葉を半ば上の空で、

二階の自分の部屋に向かった。

***
「えっ!えっ?告白だったの?!本当に?」

私は余りのうるささに思わず携帯から耳を

離した。

「絢香、気持ち分かるけどうるさいよ」

「ごめんごめん、いや信じられなくて…」

「それは私も一緒だよ!」

そう言いながら私はベッドに背中から

倒れ込んだ。

「で?どうしたの?って…あー、断った?」

「うん」

「まぁ、そうなるか…。うん、いいと思う
恋愛も大人になってからでいいと思うし、
相手があの爽やか好青年イケメン成瀬君
だしね…」

「でもさ……。」

「何?まだ、解決してないの?」

「…成瀬君、諦めてくれなかった…。」

「へ?」

「うん」

「いやいや!うん、じゃなくて!何で?」

「わかんないよ…」

「ちゃんと断った?」

「断った!でも、頭深々と下げて2週間
欲しいって…」

「2週間?じゃあ何?2週間の内に優羽を
落とすって事?」

「みたいな事は言ってた…」

「はぁ~」

電話の向こうから絢香の長いため息が

聞こえた。

「何で、私何だろ…」

そう呟くとしばらくの沈黙の後、絢香が

話し出した。

「……優羽は普通に可愛いよ?優しいし、
前に昌樹(まさき)も言ってた」

「昌樹君が?そう、なんだ…ありがたい」

昌樹君とは別の高校に通う絢香の彼氏だ

「だから優羽の事を好きになる人はそりゃ
いるよ。でも、今の優羽にイケメン君は
ダメだわ」

「うん」

「言う?前にあった事…何なら私」

「いいよ、それにどうせ私なんかに
2週間も持たないよ。言っても分かって
くれないならとことん、態度で示すしか
ないから…」

「分かった、でも何か大変だったらすぐに
助けるから!分かった?」

(嬉しい)

自然と口元が緩んだ

「うん、ありがとう」

「ん、じゃあおやすみ」

「うん、おやすみー」

電話を切って時計を見た。針はもう12を

指そうとしていた。

(もう、寝よ)

電気を消して、足下の照明をつけてベッドに

潜り込んだ。

(何とか、なりますように)

そう願いながら目を閉じた。いつもより

寝つきが悪くなりそうな、そんな気が

していた。