「はぁーはぁー」

よっぽど急いで来たのか、成瀬君は体全体で

息を整えていた。

「ごめんね、はぁ、ちょっと、…ん、
用事あって」

「いや、大丈夫だから、一旦息落ち
つかせて」

そう言って私はたまたま持っていた未開封の

お茶を差し出した。

「え?んっ、いいの?」

「いいの、さっきから話しずらそう
だし何か飲んだ方がいいよ」

「ありがとう」

そう言って成瀬君は笑った。

(う、流石のイケメンスマイル)

そう思って思わず目線を下に落とした。

すると成瀬君の足元に茶色い紙袋が

置いてあるのに気がついた。

(何だろ)

「はい、ありがとう!」

顔を上げると成瀬君は満面の笑みで

お茶を差し出していた。

「っ!」

「ん?どうかした?」

「なっ、何にもないよ?」

(あ~~びっくりしたーー)

私はドキドキする心臓を何とか落ち

着かせながら飲みかけのお茶をカバンの

中に入れた。そうしているうちに何やら

後ろでガサゴソという音が聞こえ、瞬間

フワリと花の匂いがした。不思議に思って

振り返ると何と成瀬君はチューリップの花束

を持っていた。

(な、何ですかっ!)

「上野さん、突然だけどチューリップの花言葉
知ってる?」

「えっ!え、知ら、ないけど」

「愛の告白って言うんだよ」

息が止まった。ついでに思考も止まった。

「改めて、上野 優羽さん。あなたの笑顔に
一目惚れしましただから、俺と付き合って
ください!」

「……え?」