***
(何か、話した方が良いのかな?
いやいや諦めてもらわないと
駄目なんだから出来るだけ自分からは
いかないように。普通ー)

「上野さん!」

「はいっ」

突然成瀬君から声がかかり思わず

変な声が出てしまった。

(あーやらかしてしまった)

絢香の方を見ると下を向いて必死に

笑いを堪えていた。なんとなく小川君を

見ると普通にご飯を食べていた。

(それはそれで……)

「上野さん?」

「あっ!ごめん何?」

そう言って振り返ると成瀬君は左に小首を

軽く傾げながら困ったような顔をしていた。

(うっ、辛い、この距離でその顔は駄目だよ
っていうかまつげ長くてきれい)

「上野さんはそのお弁当自分で作ってるの?」

成瀬君が私のお弁当を指差して言った。

「あっ!うん…作ってるよ?余裕ある時だけ
だけど」

「へぇ~じゃあ余裕ある時でいいから俺にも
作ってほしいなー」

『ほんっと料理上手いね、みんなすごい
 美味しいから困る』

それは、突然のフラッシュバックだった。

(最近は全く無かったのに…やっぱり人と
言葉の組み合わせが駄目なんだな)

「…駄目だよーきっと成瀬君食べたら絶対
不味いと思うから」

「ウソ、絶対美味しい」

そう言って成宮君が笑うからますます

辛くなった。

(無理だ、耐えられなくなりそう)

「そろそろチャイムなりそうだし、急いで
食べた方がいい」

突然絢香が腕時計を見ながら言った。

その言葉に私達四人は黙々と食べだした。

***
「とりあえず、私達が先に戻るから
いい?」

絢香が言う。その言葉に

「どうぞ」

と小川君が答えた。

「じゃあね」

そう言うと成宮君な笑って手をふった。

「行くよ」

私は絢香の言葉に黙って頷いてついて

行くように小走りで教室に向かった。