彼にとっての儀式のイメージは学校で味わった公開された試験やマホウビト裁判のようなものばかりで,嫌と言うよりも耐え難いものでしかなかった.
★マホウビト裁判:一連のフリティカル国のマホウビト弾圧政策のこと.

「そう,心配しなくていいのよ,心配しなくていいのよ,心配しなくてもいいのよ.

儀式とはいっても,星様と神様になる契約をするの.

辛くない,辛くない,辛くない.

先代の水様は気持ちいいとおっしゃっていらっしゃったわ.」

「気持ち…いい?」

楽しそうにそう語る下女の言葉をそのまま受け止めて,彼も本当に儀式が気持ちいいかどうかわからないのに,気持ちよさそうにそう言ってしまった.

「そう,気持ちいい,気持ちいい,気持ちいいものなのよ.

 さあ,早速やってみましょう.こちらですよ.」

下女はくるくると回転しながら入口の方へといって,彼の事をじっと見つめていた.

彼もくるくる回る下女を見て,誘われるようにくるくるとまた下女の方へ歩いていった.


 その後部屋を出て,どうでもいい廊下を適当に歩き,やがて儀式の入口までやって来た.

「さあ,儀式が始まりますよ.」

下女がさわやかにそう宣言すると,入口の扉が開いた.

部屋はさっきの部屋とうってかわって真っ暗だった.