女性の方は,でも官吏のような,あの,人を見下すようないやな声ではなかった.

もともと素直なマホウ少年は

「…うん.」

とそんなに大きくない声で答えた.

「それじゃあ,話は早いね.

 とりあえずここを出るよ.」

その後マホウ少年は自分の体が氷の底から離れていくのがわかった.

(うわ,わ,浮いてるよ…)

その時だった.

夜の巡廻をしている官吏がこの有様を見つけてしまった.

「四二八号!

 お前魔法を使っての脱走か!

 脱走だーーー!」

しかし時はすでに遅かった.空間移動魔法【ナルカ】の発動により,もう移動を始めていた.

「ふっ,マホウビトめ.

 この牢は魔法封じをしてあってな,魔法は使えないんだ!

 逃がさんぞ!!」

「甘いね.

 そんな弱弱しい封じは解いたよ.

そうさっきの女性は今度嘲るように官吏に言った.

「(…魔法封じがしてあった?…)」