その日の夜,雪か雨かわからなかったが,ともかくそれと風は荒れていた.

あばら家の牢屋は頑丈な牢屋の周りの壁があっても,音だけではなく,感覚までを伝えている.

マホウ少年は眠りたいと思っても,体が寒いといって眠らせてくれなかった.

「明日,僕は死ぬんだ.

 死ぬ?

 どういうことだろう…」

刺すような寒さは更に増した.

翌日の処刑を待たずに死んでしまいそうだ.


 そしてそれからしばらく経たない間に,遂に自然は牢屋を壊してしまった.

今,天井はマホウ少年の希望どおりに空いている.

しかし寒すぎて魔法を使えるような気分ではなかった.

ところが魔法は起きてしまった.

「お前は,マホウビトか.」

低くて太くて大きな声がいきなり聞こえてきた.

マホウ少年は寒いのと怖いので答えられなかった.

「だめだよ,そんなことでは.

 この牢屋で認めたら殺されるのは当たり前.」

女性であることには間違いないだろう.

凍てつくような,それでいて透き通った声だった.

「そうか…」

あの怖い声もたいしたことなくなった.

「安心しな.

 私もマホウビトだ.」