それからしばらく会話がなかった.

外では内地独特の寒さと風がしっかり主張していた.

話し声があったのは,2人ではなく,官吏との会話だった.

「フリティカル王が亡くなられた.

 お前たちのようなどうしようもないもの達は生き残り,国を想うフリティカル王様が亡くなられてしまうとは!」

マホウ少年は意外な感じがした.

喜ぶべき事なのだろう.

フリティカル王こそがマホウビトを犯罪者に仕立て上げ,殺しまくった張本人だと言われている.

しかし,何も変わらないような気がした.

そしてその予感は…当たってしまった.

「しかし,安心せよ.

 この国は軍部省大臣ジム様がしばらく治められることになった.

 ジム様も大変お辛い御様子で,殉死者を募っているようなんだな.

 亡き王様の政策は引き続き行われる.

 どういうことか…わかるな?

 なあ,四二七号.

 さあ出るんだ.

 裁きの時間だ.」

官吏は普通の少年を裁きの場に無理矢理連れて行った.

普通の少年は何一つ表情を変えなかった.

官吏の去り際の一言はマホウ少年を悩ませた.

「明日はお前の番だ.

 四二八号.

 せいぜい準備しておくことだな.」

1人の牢屋は2人の牢屋よりも寒かった.