「あのさー,天井壊せない,よね…?」

マホウ少年は,もう1つの普通の少年に頼み込むように聞いてみた.

表情は真剣そのものだった.

「そんな顔をして何を言うのかと思ったら…そんなことをしても仕方ないだろう?

 雨が降り込むだけだ.」

普通の少年はいやいやそう答えていた.

そして視線をマホウ少年から外した.

「ほんとなんだ!」

マホウ少年は普通の少年の顔の方にまわり込んでお願いをしていた.

しばらくは普通の少年は無視していた.

おそらくは面倒だったのだろう.

しかしマホウ少年があまりにしつこく迫ってきたので,耐えられなくなって,

「なんだよ.

 うるさいな.

 できないって言ってるだろ.

 俺は脱走しなくても開放される.

 犯罪なんかする必要は全然ないんだ.

 …お前は処刑される.

 それが運命というものさ.

 確かにマホウビトを捕えなきゃいけないというもの納得だ.」

と罵って,マホウ少年からできるだけ遠い場所に寝そべった.