After -deconstruction "God Ideology"

 マリーはその頃,それでもなお荷物を調べていた.

マリーは別に忘れっぽいというわけではないのだが,おそらく会えるまで不安なのだろう.

だから確認でもして気を紛らわしているのだろう.

ただ,少し落ち着いてきたらしく,汽車の時と違って,ジラスと話す機会をなるべく増やそうと思っている.

「あら,ジラス,お前どこへ行っていたんだい.」

マリーは落ち着いて話してみたつもりだった.

が,ジラスにとっては慣れない優しさで怖くて仕方がなかった.

「か,甲板…」

「甲板?

 そんなところにいたら寒いでしょう.

 出るなら明日の夜がいいわよ.

 明日ならずいぶん暖かくなるはずだわ.」

マリーの後半の話でその場の雰囲気まで暖かくなった.

「海から見る船もいいもんだな.」

ジラスは目を瞑ってさっきの夜空を思い出していた.

「あら,どこから見ても変わらないだろうに.」

マリーはそう言うものの,実は頷いていた.