After -deconstruction "God Ideology"




 カハシであった水神は,夜眠れないでいた.

今までは毎日のように出陣指令が出ていた.

今日もミナトシティの攻防も続いているはずなのに,マジックヴィレッジの中にいる.

マジックヴィレッジ内で人を見かけることがなかった.

広い村に自分ひとりしかいない.

「どうやら,下女に見捨てられたみたい.」

何もすることはなかった.

下女を探しても見つけられなかった.

「大体,いつもそうなんだ.

 下女が来るのは下女の用事があるときだけだ.」

それでも何もすることがなく,書物庫に来ていた.

水色ののっぺりとした空間は耐えがたかった.

書物庫も他の部屋の同じく音がなかったが,物はあった.

本である.

本は逃げることなく,とどまり続けている.

「僕もそう.

 ここに来るのは本に用事があるときだけ.

 同じなんだよね.」

適当に棚から本を取った.

棚と本がぶつかり合う音がした.

水神は本を持っている.

「本って本当にえらいよね.

 いつもここにある.

 なんていう本だろう.」