火神もドキッとしてくらっとした．

「もうジラスなんていう奴はいないひけ．

　いるのは火神のみひけ．

　お前も生神として生きていくひけ．」

ひけーこんはためらわずに尻尾を大きく回した．

それはさっき水神に攻撃したのとは比べものにならない強さだということは火神にもすぐわかった．

尻尾の音が違っていた．

その尻尾に押されてキャサは倒れてしまった．

あの元気なキャサが眠っている訳ではないのに反応がなくなってしまった．

「おい，キャサ，大丈夫か，おい！」

火神（ジラス）は床に転がっているキャサを丁寧にゆすった．

それでもやはり，ジラスに応えることはなかった．

ひけーこんはキャサだけではなく，火神に対しても軽く，すごく軽く尻尾を回した．

「火神ひけ，何をしているひけ．

　その女は生神として生まれ変わるひけ．

　その女は死んではいないひけ．

　ちょっと死の世界にいって生の尊さを学んでくるだけのことひけ．

　それよりも，早く闇軍団を退治しに行くひけ．

　…そうそう，生神は神殿に一度戻ってからここに来るひけ．」

ひけーこんはそう捨て台詞を吐くとそそくさと部屋を出て行ってしまった．