「みんな離れて!」

突然聖神が叫ぶ.

手前にいる水神も慌てながらも歩き始める.

上流に近い土神や火神が急げと増強して叫ぶ.

風神はいやいやと嘆いている.

雷神は笑いながら歩いていく.


 それからいくらも過ぎないうちに地響きのような音がどの神の耳にも聞こえてきた.

「これはカッドン(※)とは比べ物にならないかもしれないぞ!」
★カッドン:土神が使う,土属性の強力な魔法.実は地震が起こるのではなく,爆発が起こる魔法ということになっている.

やっと二人の幅になりかけたところで土神は怖さを感じた.

「うあぁうぁあ」

それからすぐに鋭い光が辺り一面を覆った.

どの神も目をとっさに隠す.


 光も収まると地響きも収まる.

「大丈夫かなーっ.」

雷神が心配しているようだ.

ただ立っている神も少なくない.

……しばらくすると川の水をかき分ける音が聞こえてきた.

「これが結石界よ.」

聖神がめったに見せない笑顔を見せながら小さなでこぼこした石を見せてくれた.

「もう,川の水で水死すると思った.

 いい加減にしてよねぇ.」

風神が冷や汗をふき取りながら愚痴をこぼしていた.

と言いつつもその中には黒いものはなかった.

他の神も大きな声で笑った.

(あんなものが僕の体の中にあるのだろうか?)

一人だけ腹のそこから笑ってはいなかった.