「うん,確か持って来てはいたはずなんだけど.」

ローブにはどんなに水神が探しても金はなかった.

その姿を見て,参拝者が少なくてよかった,と火神は思った.

「お前,本当に忘れ物とか多いよな.

 確かミナトシティにいた時もそうだっただろ?

 ほら,買い物のつりを忘れたって.」

もう水神は自分の体を捜すのを止めていた.

自分が金を持っていないことを自覚したのだ.

「あれはね,すごい速さで近づいてきて,僕に渡されていたおつりを奪ったんで,落としたんじゃないよ.」

「おい,ちょっと待てよ.すごい早さって…そいつ雷神なんじゃないか?」

「そうかもしれない.」

「かもしれないじゃない.

 そいつなんだ.

 金なんておれが出してやるからさっさと戻ろうぜ.」

火神は入口に近づいて風が弱くなったからか,燃え始めていた.

今度は水神が火神に連れて行かれる格好になって出て行った.

「ありがとう.

 おかげで神に合えそうだ.」

入口の巫女に少しばかりの金を渡して出て行った.

外はもう夜で,雲はどこかに行ってしまって,星が瞬いていた.

水神はすぐに【ナルカ】を唱えて,マジックヴィレッジに戻っていった.