After -deconstruction "God Ideology"

「まあ,そう落ち込まずに.

 ところで,どちら様ですか.

 あ,失礼ですか….」

「いえ,いいんです.

 おれの名前はジラス.

 …この村に住んでい…た者です.」

「そうですか.

 いつ頃までここにいたのですか.」

「確か,去年の冬まではいたと思います.」

「それじゃ私も知らないはずですわ.

 ところで,どこに住んでいたのですか.」

「ちょっと向こうの…背の高いトロイスの木のそばにある一軒屋です.
 ★トロイスの木:ムカマハヤタ周辺に植生する針葉樹.成長すると高さが男性の身長の3倍程になると言われている.鉄道沿線に多くある.ムカマハヤタの田舎の象徴でもある.

 もうその木は落雷で焦げてしまったのですが.」

「…あら,あそこの.

 ひょっとしてあなたがあそこの坊っちゃんなの.」

「何かご存知なのですか.」

「ええ,イーリュイさんの家でしょう.
 ★イーリュイ:ジラスやソラガス(ジラスの父),マリー(ジラスの母)の苗字.

 イーリュイさんは1ヶ月位前までここに住んでいたのよ.」

「今はどこにいるか,知っていますか.」

「ええ,確かミナトシティの親戚のところに移住するって言ってたわ.」

「ミナトシティ,なんですね.」

「あ,そうそう.

 こんなところで立ち話もあれじゃない.

 雨降ってるし.家の中にどうぞ.」

「いや,結構です.

 早いところミナトシティに行って親父やおふくろに会ってきます.」