『すき。』

言葉にした思いは、君には届かなくて。

代用品を求めた私に、彼は丁度良かった。

君に伝えられなかった言葉を、

彼は静かに聴き取って。

君に欲っした言葉を、

君とは違う優しい声音で私の鼓膜を震わした。

それでも彼は代用品で、

私も彼の代用品で。

お互い何処かが狂っていたから、

どちらともなくくっついて。

無理に押し付けた心の割れ目に、

ーーこれは恋だーー

と処置をして。

消えない傷に、

見てみぬふりをした。



中学三年生の、夏。