◇ヌードで魅せて◇



無理やり引っ張った腕は、思った以上に簡単に解放されて。

先輩の顔を見ることもなく入り口へと向って走り出した。

開けようと思った入り口のドアは、あたしが触れる前にゆっくりと開いて。

目の前に現れたのは、あの写真の先輩で。


「雅、ここにいたのね」


まるであたしの存在なんて無視して、通り過ぎていく。

フワリ香る甘い香り。

風になびく髪から漂ってきて、それが余計に鼻につく。


「…とらないでね。雅はあたしのだから」


小さな声。

だけど、わざと耳元であたしにだけ聞こえるように発した言葉に。

ギュッと下唇を噛みしめた。


バタン…

屋上の重い扉が閉まり、外の世界とも遮断される。


「……とらないで、か」


涙は出なかった。


もう終わったことだから。

あの絵が完成したときに、この夢は終わった。


ただ現実に戻るだけ。

今までと同じ。


…なんだ、たしたことないじゃん。