無理やり引っ張った腕は、思った以上に簡単に解放されて。
先輩の顔を見ることもなく入り口へと向って走り出した。
開けようと思った入り口のドアは、あたしが触れる前にゆっくりと開いて。
目の前に現れたのは、あの写真の先輩で。
「雅、ここにいたのね」
まるであたしの存在なんて無視して、通り過ぎていく。
フワリ香る甘い香り。
風になびく髪から漂ってきて、それが余計に鼻につく。
「…とらないでね。雅はあたしのだから」
小さな声。
だけど、わざと耳元であたしにだけ聞こえるように発した言葉に。
ギュッと下唇を噛みしめた。
バタン…
屋上の重い扉が閉まり、外の世界とも遮断される。
「……とらないで、か」
涙は出なかった。
もう終わったことだから。
あの絵が完成したときに、この夢は終わった。
ただ現実に戻るだけ。
今までと同じ。
…なんだ、たしたことないじゃん。

