「じゃあ、先に部室行って用意しとくわ」
「うん、じゃあ着替えたらすぐ行くね」
「おう」
じゃあ、と手を上げて教室を出て行った井上くんを見送って、そそくさと身支度を整え始める梓を横目に。
二人にバレないように小さな溜息を一つ。
「あたしはいいや、まだ作品も出来上がってないからやっちゃわないと」
「作品って美術部の?」
「うん、そう。今日中に仕上げなきゃいけないから」
「そうなんだ…、うん、わかった。井上には後で写真もらえるように言っとくね」
「うん、ありがと」
着替え終わって教室を出たあと、しっかりと鍵がかかったことを確認して。
教室に忘れ物をしたとウソをついて美帆と梓と別れた。
美術室へ行くのに写真部の前を通るのがいつもの道順だったけど。
わざわざ大回りして写真部を避けて美術室へと向いたかった。
この時間に先輩はいないかもしれない。
会う確立なんて、ほぼないに違いない。
だけど、もし…
なんて考えると怖かった。
会いたくない。
今、会ったらまた気持ちが溢れちゃいそうだから。
電源を切ったままのスマホは、意味を成していなかった。
あのメッセージを先輩は見たのか。
見てどう思ったのか。
少しでも気にしてくれただろうか。
考えたってもうどうしようもないのに。

