あたしの気持ちが重たすぎて、依存しすぎて。
彼氏しか見えなかったあたしを、きっとウザイと思ってのかもしれない。
あたしの気持ちが大きくなるほど、彼氏の気持ちが冷めていったことに気がつきたくなくて。
いつも笑ってた、何を言われても笑って。
乱暴されても、人形みたいに扱われても、好きだからそれを全部受け入れた。
忘れたい過去、でも…そんなに簡単に忘れられない過去。
「最近の葵…すごく楽しそうだった」
美帆の声が、風と一緒に耳に流れ込んでくる。
「その理由は、先輩だったんだね」
「…うん」
楽しかった。
ほんの少しでも、先輩の近くにいられて幸せだった。
「もうすぐだね…文化祭」
さっきも同じこと言ってたよね?
だけど、さっきとは少しニュアンスが違って聞こえた。
「うん、そうだね」
「頑張ろうね」
「うん」
「さ、じゃあ戻って作品仕上げちゃいますか!」
「うん」
美帆の笑顔を見て、自然と自分も笑顔を作ることができた。
そうか、あたしは自分の気持ちを誰かに聞いてもらいたかったんだ。
どうこうなりたいとか、どうしたらいいとか、そんなのは二の次で。
ただ、自分の中で納まりきらなくなった先輩への気持ちを言葉にしたかったんだ。
美帆に話して少しだけラクになれたような気がした。
心の中溢れすぎで溺れそうな気持ちを、美帆に話したことで救い出せたような気がした。