「ごめんなさい」
そう言って視線を下げて、彼女の視線から逃げる。
上履きのカラーを見て3年生だとわかった。
先輩と同級生だったんだ、あの写真の女性は……
そうなのだ。
まかさ今ぶつかってしまった人が、さっき写真で見た女の人だなんて本当にビックリだし。
正直、会いたくなかった。
この学校で先輩の同級生だったなんて、知りたくもなかった。
「ケガしなかった?」
「は、はい……」
「そう、よかった。ホント、ゴメンね」
安心したとでも言うようにホッと息を吐き出し、優しく微笑んでくれるその顔があまりにもキレイ過ぎて眩暈がしそう。
すらりとしたスレンダー美人。
サラサラの髪からふんわりと甘い香りがして、やっぱりクラクラしてしまう。
優しい人だった。
とても感じのよい人だった。
「じゃあね」
ニコリと微笑んだまますれ違っていく彼女をゆっくりと追いかけるように振り返ると。
手を振りながら嬉しそうに駆け出す彼女の後ろ姿が目に入った。
「雅!」
彼女の甘い声が、鼓膜を振るわせた。
向こうから歩いてくる吉良先輩に駆け寄って。
嬉しそうに先輩の腕に自分の腕を絡ませる。
そんな彼女を先輩は、今まで見たこともないような優しい瞳で見下ろしていた。
先輩の瞳には、きっとあたしなんて映っていなくて。
ここにあたしがいることなんて気がつくこともなくて。
これ以上、あんな顔をした吉良先輩を見ていたくなくて。
ギュッと目を閉じて、先輩に背を向けた。

