「ジュースでも買ってこよっと…」


小銭の入ったお財布をスカートのポケットにしまい、購買に行くために美術室を出て行く。


まだ部活前のこの時間は廊下にもほとんど人はいなくて、あたしの鼻歌まじりの声がやけに大きく響いていたけれど気にしない。

スキップなんてしちゃってるけど、そんなの関係ない。


いつもは混雑している購買も、並ばずに買えちゃうことに嬉しくなっちゃう。

自動販売機では買えないフルーツミックスジュースがあたしのお気に入りなの。

フルーツの風味とミルク感のバランスが絶妙で甘すぎずスッキリ飲めて大好きなんだ。


「フルーツミックスとコーヒー牛乳ください」

「はい、200円ね」


お財布から出した200円をおばちゃんの手のひらに乗せると、ニコリといつもの穏やかな笑顔であたしの手にジュースを乗せてくれた。


「もうすぐだね、文化祭」

「ホントですね、準備もあっという間」

「でも、楽しそうな顔してるよ~、うんうん、いい顔」

「フフ、楽しいですよ。素敵な思い出になりそうです」


そんな他愛もない話をしていると、他の生徒も何かを買いに来たのかこちらに向ってきてるのが見えた。


仕事の邪魔しちゃいけないと、ペコリと笑顔でお辞儀をしてから今来た道を戻りだした。