◇ヌードで魅せて◇



気がつけは2時間は描き続けていただろうか。

誰もいなかったはずの美術室の中には、チラホラと他の部員が増えていた。

みんな自分の作品の最後の仕上げに取り掛かっている。


集中力が途切れた瞬間に疲労の波に襲われて。

そのまま後ろに倒れるように、イスの背もたれに身体を預けて脱力した。


「すごい集中してたね…」

「美帆……」


来てたんだ、なんて言葉にすれば。

美帆は少し呆れた笑みを浮かべながら、目の前のあたしの作品に視線を移した。


昨日までの完成間近のものとは違うそれを見て。

美帆は驚き目を見開いた。


「葵…これって……」


息を呑む美帆に、切なく微笑む。


「コレが今のあたしの『儚い夢』なんだ」


一度途切れてしまった集中力は、そう簡単には戻ることもなく。

キリの良いところで終わりにした。

時計を見遣れば、もうすぐ6時になる。

日が長くなったこの時期は、まだ外は明るかった。


ふとスマホに視線を落とす。

昨日の約束は、有効なのだろうか。


あんなあからさまに嫌な態度をとられたあとで。

どんな顔して会えばいいのかもわからない。


…どんな顔、って。

そんなの普通でいいんだ。

むしろ、こっちも嫌悪感たっぷりな感じで接してもいいのかもしれない。


だって、あたしは先輩のことが『嫌い』だから選ばれたのだ。