ツンツンと腕を突かれて、ゆっくりと顔を上げると。
前方からこっちに向って歩いてくる吉良先輩を見つけた。
昨日の今日だ、少し恥ずかしい。
未読のままだったメッセージの返事は今朝返したけれど。
そのあと、先輩からの返事はなかった。
それでも、ほんの少しだけ先輩との距離が縮まったのではないかと嬉しく思っていたのに。
ドクン…と跳ねた心臓。
嫌な音を立てながら心拍数を上げていく。
「…えっ」
まるで氷のように冷たくて突き刺さるような鋭い瞳と目が合って、瞬きも忘れて固まってしまった。
目が合ったのは一瞬だけだった。
すぐに逸らされて。
すれ違いざまに聞こえた、あきらかに不機嫌な舌打ち。
……どうして?
そう言葉にしたいのに。
あまりにも冷たい先輩の表情に、言葉が喉に張り付いて出てこなかった。
再び俯いてしまったあたしを、美帆は怪訝そうに見つめていたけれど。
何も言えない。
何も言いたくない。
ヘタクソな笑顔を作ったところで美帆に心配をかけるだけだから、さっきまでと同じように恥ずかしさを装いながらみんなの後に着いていった。

