固まったままで、瞬きも忘れるくらいで。
だけど、ちゃんと覚えている。
耳に残る先輩の心地良い声。
先輩が見えなくなってから慌てて、その覚えている番号を自分のスマホの中に登録した。
忘れる前に……
なんて、そう簡単に忘れられないくらいに衝撃的で。
それに、あたし記憶力だけは無駄にいいんだ。
まさか、吉良先輩の番号を知ることができるなんて思ってなかった。
ギュッと握り締めたスマホに、勝手にニヤけてしまう締りのない顔。
「…好きじゃない」
呪文のように言い聞かせていた言葉も。
今じゃ、全然意味がない。
好きじゃない。
好きになってはいけない。
あたしは、先輩のことが嫌いなんだから。
だからダメなんだって。
自分の気持ちに気がついたら。
先輩と一緒にはいられないんだって。
いつもより強く自分の言い聞かせて。
そのたびに、胸がギュッと締め付けられて苦しくて。
泣きたくなる自分に喝を入れるように、パチンと両頬を叩いた。

