「乗れ」
「えっ…」
送るって、まさかこのバイクで…?
答えなんて聞かなくてもわかるのに。
まさかの事態にオロオロするしかできなかった。
立ち止まったままのあたしを前に、わかりやすく溜息を吐いた先輩は。
あたしから奪ったメットをそのままあたしの頭にかぶせた。
突然感じた衝撃に目の前がクラクラして。
視界が狭まり、頭にズッシリと感じた重さとその息苦しさに酸欠になりそうになった。
そんなあたしにかまうことなく、少し強引に腕を引かれて。
「早くしろ」
引き寄せられたその反動で、先輩の体にぶつかってしまう。
急に近くなった距離と、メットの重さ。
未だに理解できなくて。
だけど、なかば半強制的に乗せられたバイクに緊張が走った。
目の前には先輩の大きな背中があって。
少し手を伸ばせば触れられる距離。
だけど、そんなに簡単に触れていいものなのかわからなくて。
行き場のよくわからないあたしの手は、空中を彷徨っている。
バイクに乗るのなんてはじめてのことで。
こんなに近い距離に先輩がいるのだってまだ慣れてなくて。
バクバクとすごい音を立てているあたしの心臓は、このままキャパオーバーで壊れてしまわないだろうか。

