ブランコを漕ぐのをやめて、自然に止まるのをゆっくりと待ちながら。
ずっと上を向いていたせいで、近づいてくる人影に気がつかなかった。
ブランコが止まったことで、視線を斜め上から正面へ戻したときに初めて。
すぐ近くまで来ていた先輩の姿を見つけることができた。
薄暗い中でも、存在感のある大きな身体と。
その片側に大きな黒い物体……
「先輩…?」
ブランコから下りて、近づいてくる先輩に駆け寄って初めて。
それが大きなバイクだとわかった。
「家どこ?」
「えっ……」
「これ、付けて。で、家、どこ?」
あたしの両手にポンと乗せられたヘルメット。
思ったよりもズッシリと感じたヘルメットと先輩の顔を交互に見ながら、どうしたらいいのかわからず呆然とするあたしを見て、先輩が微かに目尻を下げたような気がした。
実際はそんなによく表情なんて見てないけど。
雰囲気と言うか、先輩の纏う空気は一瞬緩んだように感じたんだ。
「で、どこ?」
三度目のその質問に、若干イラつきを感じて。
「あ、A駅の新しくできたショッピングモールの近くです」
慌てて答えると、先輩は何も言わすにバイクに跨ろうとしていた。

