廊下に出たとたんに、周りの空気がガラリと変わる。
ここが現実世界なら。
やっぱりあの部屋は、夢のような特別な空間。
いつもは現実に戻った瞬間に終わる先輩との時間も。
今日はあと少しだけ続くのかと思ったら。
無意識にスキップまでしてしまう。
廊下ですれ違う生徒は、そんなあたしを見てクスクス笑っているけど。
何やってんだ、なんて呆れた視線を送ってくるけど。
そんなの全然気にしない。
「葵、もう帰るの?」
すれ違ったクラスの子に話しかけられて。
「うん、今日はもう帰るよ!」
元気に答えているあたしを、笑顔で見送ってくれるクラスメイト。
大きく手を振ってから、小走りで裏門へと向かっていった。
靴に履き替えて。
いつも帰る方向とは反対のほうへと足を進めていく。
ふと見上げた校舎には、まばらな光り。
さすがに文化祭前だけあって、また校内にはチラホラと残っているクラスがあって。
ポツポツと窓から明かりがもれていた。
「もう少しなんだな……」
あたしの呟いた声は、誰もいない裏庭に消えていく。
うちのクラスはみんなが仲良しなこともあって、準備も順調に進んでいるためもう残っている人はいないだろう。
部活組は放課後の作業の後半は免除になっているので。
帰宅部の人たちを残して出てきてしまったけれど、そのときにはもうほぼ作業は終わりに近かった。
残るは衣装の最終チェックと、メニューの最終決定。
後はシフトの調整と、小物作りくらい。
衣装は被服部。
メニューは料理部にほぼまかせっきりではあるけれど。
装飾や内装、看板などは美術部のあたしと美帆が中心になって進めていった。

