◇ヌードで魅せて◇



廊下に出たとたんに、周りの空気がガラリと変わる。

ここが現実世界なら。

やっぱりあの部屋は、夢のような特別な空間。

いつもは現実に戻った瞬間に終わる先輩との時間も。

今日はあと少しだけ続くのかと思ったら。

無意識にスキップまでしてしまう。


廊下ですれ違う生徒は、そんなあたしを見てクスクス笑っているけど。

何やってんだ、なんて呆れた視線を送ってくるけど。


そんなの全然気にしない。


「葵、もう帰るの?」


すれ違ったクラスの子に話しかけられて。


「うん、今日はもう帰るよ!」


元気に答えているあたしを、笑顔で見送ってくれるクラスメイト。

大きく手を振ってから、小走りで裏門へと向かっていった。


靴に履き替えて。

いつも帰る方向とは反対のほうへと足を進めていく。

ふと見上げた校舎には、まばらな光り。


さすがに文化祭前だけあって、また校内にはチラホラと残っているクラスがあって。

ポツポツと窓から明かりがもれていた。


「もう少しなんだな……」


あたしの呟いた声は、誰もいない裏庭に消えていく。


うちのクラスはみんなが仲良しなこともあって、準備も順調に進んでいるためもう残っている人はいないだろう。


部活組は放課後の作業の後半は免除になっているので。

帰宅部の人たちを残して出てきてしまったけれど、そのときにはもうほぼ作業は終わりに近かった。


残るは衣装の最終チェックと、メニューの最終決定。

後はシフトの調整と、小物作りくらい。


衣装は被服部。

メニューは料理部にほぼまかせっきりではあるけれど。

装飾や内装、看板などは美術部のあたしと美帆が中心になって進めていった。