けっこう近い距離で見つめ合ってるはずなのに。
不思議といつもの緊張感を感じないのは、部屋が暗いせいだろう。
二人の距離感が少しだけ麻痺してる。
「帰るんだろ?」
「え…、はい。今日はもう帰ろうかと……」
結局、写真も撮ってもらえなかったし。
自分の作品の製作も出来なかったけど。
先輩が何が言いたいのか全然わからなくて、小首を傾げていると。
また先輩が、フッと鼻で笑ったような気がした。
「先輩…?」
「送ってく」
「えっ…!?」
「だから、そこで待ってろ」
思ってもみなかった言葉に固まるあたしを余所に、先輩はすぐに背を向けて離れていく。
しばらく目を見開いたまま動けなくて。
だけど、言葉の意味を理解したとたんに、ありえないほど心臓がドキドキし始めた。
「先輩…?」
背を向けたままの彼に呟いたところで、また何も応えてくれない。
今のは空耳なのかもしれない。
あたしの都合のいい妄想なのかもしれない。
どうしたらいいのかわからなくて、そのまま立ち尽くすあたしに。
「ここ片して鍵閉めたら行くから。先行ってろ」

