◇ヌードで魅せて◇



だけど、慌ててるのはあたしだけ。

目の前の先輩はゆっくりと目を開けると。

特に気にする素振りを見せることなく、その場に立ち上がった。


相変わらず無言のまま。

薄暗いせいで、先輩が今どんな顔をしているのかわからない。


イラついてるのか。

呆れているのか。


それともやっぱり、無関心?


「せ、先輩…?」


何か言ってよ、なんて思っても無駄だってわかってるけど。

この薄暗い部屋の中では、表情が見えないぶん余計に不安になってしまう。


すでに帰る準備が出来ている先輩を見て。

焦るように自分の荷物をまとめ始めた。


焦っているせいで、ペンケースから鉛筆と消しゴムは飛び出し転がっていくし。

スケッチブックはカバンから半分くらい飛び出したままだし。


アタフタする姿を、何も言わずにジーッと見られていると思うと。

余計に、焦ってしまって。

今度はカバンごとひっくり返してしまいそうになった。


「……慌てすぎ」


そう言って、ゆっくりと近寄ってきた吉良先輩の手には。

さっき落とした鉛筆。


「あ、ありがとう、ございます!」


近くなった距離に少しだけ後ずさりしそうになって。

真っ直ぐに見下ろされたその瞳から逃げるように視線を逸らす。


せっかく拾ってくれたのに、なんて可愛くない態度だろう。

ニコリとも笑えない。