「じゃあ、明日からよろしく」


一瞬頭の中がフリーズして固まっているあたしになんてお構いなしに。

それだけ言って、背を向けしまった先輩だったけれど。

振り返る瞬間に見えた先輩の顔は、少し口許が緩んでいたような気がした。


なんだ…

笑えるんじゃん。


言葉も少ないし、無表情だし、何を考えてるか全然わからないけど。

きっと悪い人じゃない。

そう思えるのは、さっき見た横顔とこの人の写真がどれも優しい雰囲気だったからなのかもしれない。


「よろしくお願いします」


背を向けてしまった先輩には見えないかもしれないけれど。

あたしは丁寧にお辞儀をして笑顔を向けた。


そう、表情が見えないもはあたしも同じ。

だけどなんでだろう。

さっきまでの嫌な雰囲気はどこかに消えていていて。

先輩の背中も、どこか優しさを感じてしまう。


さっきまで写真を撮っていたカメラの手入れをするその姿は、愛しいものに触れているようにも見えて。


あたしは、その光景をしばらく眺めていた。