そんな先輩と一瞬だけ見つめあった後、耐えられなくて視線を逸らしたのはあたしのほうだった。
「あの……」
視線を彷徨わせて。
恐る恐る言葉を口にしていくと。
フッと、鼻で笑われたような気がした。
「……来たんだ」
「えっ…」
予想外の言葉に、大きく目を見開いて。
唖然とするあたしとは反対に、馬鹿にしたよう鼻で笑う吉良先輩。
「来たんだ、って…」
来いって言ったのは先輩なのに。
先輩のその態度に、少しずつ大きくなっていくイライラした気持ち。
「そんな言い方…」
しなくてもいいじゃないと、キリッと先輩を睨みつけた。
「来い、って言ったのは先輩ですよね。だから来ました、ちゃんとお断りしようと思って」
イライラのせいで早口に言葉を並べて、しまいに語尾まで強めになってしまう。
言い終わった後、なんだかバツが悪くてまた視線を落とした。
でも、吉良先輩はまったく気にすることなく。
どちらかといえば、少し面倒そうな顔したまま眉一つ動かさなかった。
またそれが、気に入らない。
チラッと見えた先輩は、相変わらずの無表情。
何を考えているのか、まったく理解できない。
この人の思ってることなんて、きっとあたしにはわからない。
別に理解しようとも思わないし。

