ゴクリと唾を飲み込み。
手のひらにはじんわりと嫌な汗をかく。
さび付いたドアは、ガラガラ…と軋んだ音を立てて。
開けた瞬間に、埃っぽさが体に纏わりつく。
こんな薄暗くて埃っぽい場所にいたら、体に悪そう。
なんて思いながら、口許を手で押さえたまま奥の方へと進んでいった。
「…失礼します」
返事はない。
「あの……」
背の高い本棚が並んでいて。
今は使われていないであろう教材や資料が乱雑に置かれていた。
この間はそんな余裕はなくて良くわからなかったけれど。
この本棚のせいで部屋の光は遮られてしまって、昼間なのに薄暗いのだ。
こんなところに、本当に先輩はいるの?
シーンと静まり返る室内。
迷路のような部屋の中をどうにか通り抜け、奥へと進んでいく。
物置のような小さな部屋かと思っていたけれど。
奥のほうがまだいくらか広いようだった。
棚の間から光が漏れていて。
その先、少しだけ広く開いたスペースがあった。
でも、それはどう見ても意図的に作られた空間で。
まるで秘密基地。
「…先輩?」
ガタンと物音がしたような気がして。
恐る恐るそちらへと近づいていくと。
「あっ……」
窓際。
赤くなりだした夕日にカメラを向ける先輩の姿が飛び込んできた。

