それなのに。
今、ここに立っている。
放課後。
部活に向う途中のあたしは、美帆には用事があると先に行ってもらった。
美帆は何か言いたそうだったけれど。
今は何も聞かないでと、目で訴えたことで小さな溜息を一つだけ零して。
先に美術室へと向かって言った。
別にここを通らなくたって、遠回りにはなるけど美術室へは行けるんだ。
だけど“つい癖で”なんて言い訳してる自分がいる。
「何やってんだろ」
自分の意思の弱さに、なんだか情けなくなってくる。
あれだけ、行かないって堅く誓ったのに。
……馬鹿だな。
……認めちゃえばいいのに。
頭の中で、自分じゃない誰からそんな言葉を囁いたような気がした。
認めるって、何を?
その問いには、誰も答えてくれなくて。
はぁ…と溜息が零れた。
この部屋に。
今日も吉良先輩はいるのだろうか。
もしいなかったら帰ればいい。
そんなのあたしのせいじゃないし。
あたしはちゃんと言われたとおりに、ここに来たのだから。
また一つ言い訳をする。
もしいたとして、そしたらそのときははっきりと断ればいい。
それだけの話だ。

