◇ヌードで魅せて◇



それなのに。

今、ここに立っている。


放課後。

部活に向う途中のあたしは、美帆には用事があると先に行ってもらった。

美帆は何か言いたそうだったけれど。

今は何も聞かないでと、目で訴えたことで小さな溜息を一つだけ零して。

先に美術室へと向かって言った。


別にここを通らなくたって、遠回りにはなるけど美術室へは行けるんだ。

だけど“つい癖で”なんて言い訳してる自分がいる。


「何やってんだろ」


自分の意思の弱さに、なんだか情けなくなってくる。

あれだけ、行かないって堅く誓ったのに。


……馬鹿だな。

……認めちゃえばいいのに。


頭の中で、自分じゃない誰からそんな言葉を囁いたような気がした。


認めるって、何を?

その問いには、誰も答えてくれなくて。

はぁ…と溜息が零れた。


この部屋に。

今日も吉良先輩はいるのだろうか。


もしいなかったら帰ればいい。

そんなのあたしのせいじゃないし。

あたしはちゃんと言われたとおりに、ここに来たのだから。


また一つ言い訳をする。


もしいたとして、そしたらそのときははっきりと断ればいい。

それだけの話だ。