◇ヌードで魅せて◇



その声に反応したのは、あたしだけじゃなく。

近くにいた友だちや、他のクラスの生徒にまで注目されて余計に身体が凍りつく。


だけど、先輩はそんなことも気にすることなく。

真っ直ぐにあたしを睨みつけて。


「放課後、あの部屋に来い」


冷めた声が再び踊り場に響いた。


「絶対に来いよ」

「……いっ、行きません!」

「拒否権、なし」

「い、行かない。絶対」


動揺と緊張でどもるあたしを見て、先輩は少し俯いてフッと鼻で笑う。

俯いていても、まだ階段を上る途中のあたしからはハッキリと顔が見えるわけで…


微かに上がった口角、微かに細められた瞳。

下がった目尻。


そんな先輩から視線を逸らすことなんて、できるわけがない。


笑うとか。

そんな顔…反則、だって。


何もなかったかも用に去っていく先輩を、呆然と見送っただけで。

あたしはその場からまた動けなかった。


踊り場に残ったのはあたしと美帆だけだった。


「なに、葵! いつの間に先輩と知り合いになったの?」


美帆があたしの両肩を掴んでブンブン振り回す。

グラグラと揺れる頭は、余計にあたしの思考をグチャグチャにしてくれる。


「…知らない」

「えっ、だって…葵の名前……」
「知らないってば!」


美帆の手を振り払って、その場から逃げだした。


「葵-っ!?」