◇ヌードで魅せて◇



足元がスースーしてやっぱり落ち着かない。

裾を押さえてモジモジしながら、恥ずかしさで思わず俯いた。


きっと今、真っ赤な顔してる。


誰も何も言ってくれないことで、不安もどんどん募っていく。

感じるのは、みんなの視線だけ。


そんな中。

ガシッと両肩を掴まれて。

目の前にはなぜか、瞳をキラキラさせた梓の姿。


「か、か、か…」

「か…?」

「か、可愛い~~!!」


悲鳴に近い声にビクリと体を硬直させてるあたしを、梓はギュッと力任せに抱きしめてくる。


「く、くるしっ…」

「想像通り!! いや、それ以上!!」


大袈裟なほどに声をあげる梓を見て、周りも苦笑いしていた


「これならうちのナンバーワンになれるわ!」


まるで少女マンガのように瞳キラキラ。

胸の前で両手を握り締めて、ウットリする梓は誰にも止められないのだ。


まるで他人事のように傍観。


「それって葵のことだよ?」


クスクス笑う美帆が、いらない情報をくれる。

せっかく現実逃避してたのに…


「あたしに“可愛い”は無縁じゃない?」

「そう思ってるのは葵だけだと思うよ?」

「えぇーっ!?」


そんなわけないじゃない、と。

近くにある姿見で、自分の姿を確認する。


くるっと回って、後ろ姿もチェック。


……うん、悪くない、かも?


普段見慣れない格好なだけに少し戸惑いつつも。

女の子だもん、こういうフリフリ…嫌いじゃない。

うん、だんだんと見慣れてくれば悪くないじゃない。

他の子も衣装に着替えたことで、自分だけが浮いてるわけでもないし。

文化祭だからこその、こんなラブリーな衣装でも。

ちょっと、楽しみかも。

なんて、単純な自分もなんだか楽しかった。