足元がスースーしてやっぱり落ち着かない。
裾を押さえてモジモジしながら、恥ずかしさで思わず俯いた。
きっと今、真っ赤な顔してる。
誰も何も言ってくれないことで、不安もどんどん募っていく。
感じるのは、みんなの視線だけ。
そんな中。
ガシッと両肩を掴まれて。
目の前にはなぜか、瞳をキラキラさせた梓の姿。
「か、か、か…」
「か…?」
「か、可愛い~~!!」
悲鳴に近い声にビクリと体を硬直させてるあたしを、梓はギュッと力任せに抱きしめてくる。
「く、くるしっ…」
「想像通り!! いや、それ以上!!」
大袈裟なほどに声をあげる梓を見て、周りも苦笑いしていた
「これならうちのナンバーワンになれるわ!」
まるで少女マンガのように瞳キラキラ。
胸の前で両手を握り締めて、ウットリする梓は誰にも止められないのだ。
まるで他人事のように傍観。
「それって葵のことだよ?」
クスクス笑う美帆が、いらない情報をくれる。
せっかく現実逃避してたのに…
「あたしに“可愛い”は無縁じゃない?」
「そう思ってるのは葵だけだと思うよ?」
「えぇーっ!?」
そんなわけないじゃない、と。
近くにある姿見で、自分の姿を確認する。
くるっと回って、後ろ姿もチェック。
……うん、悪くない、かも?
普段見慣れない格好なだけに少し戸惑いつつも。
女の子だもん、こういうフリフリ…嫌いじゃない。
うん、だんだんと見慣れてくれば悪くないじゃない。
他の子も衣装に着替えたことで、自分だけが浮いてるわけでもないし。
文化祭だからこその、こんなラブリーな衣装でも。
ちょっと、楽しみかも。
なんて、単純な自分もなんだか楽しかった。

