香織さんを見送っているだけで何も言わない先輩は、今、とても複雑な気持ちなのだろう。
目を逸らすことなく香織さんの背中を眺める先輩の切なそうな横顔を見つめて。
「寂しい?」
あたしの言葉に、『ちょっとな』と困った顔をした先輩。
「…香織にも、イイヤツが出来ればいいけど…な……」
「そうだね」
先輩にとって、あたしの存在が支えになっていたらいいのにと思う。
先輩に寄り掛かって、肩にちょこんと頭を乗せると。
先輩の腕が、あたしの肩を引き寄せて抱き締めてくれる。
「吉良先輩?」
「ん?」
「好きだよ」
すぐ側であたしを見下ろす先輩の唇に、チュッと触れるだけのキスをする。
「…ヤバイな」
「フフ、どうして?」
ユラユラ揺れる先輩の瞳を見つめていると、大きな先輩の手がその瞳を隠してしまう。
「俺、泣きそう」
隠れたその目尻に、涙がキラリと光ったような気がした。
あたしはそれに気づかないフリをして、先輩にピタリと身体を寄せた。

