「…ゴメン、香織。俺もう……」
先輩の言葉に、一瞬ビクッとして。
香織さんの瞳が微かに揺れた気がした。
「俺、葵が好きなんだ」
そんな香織さんを前にしても、はっきりと先輩の言葉で思いを伝えてくれた。
あたしの手を握っていた先輩の手に、キュッと力が加わる。
あたしの手が微かに震えていたことに気がついてくれたのかもしれない。
大丈夫だ、ってそう言ってくれているような気がして。
あたしも大丈夫、って返すように、先輩の手を握った。
「フフッ…知ってた」
「香織……」
「いつ、そう言われるか…って、ずっと思ってたの。雅の気持ち気づいてたのに…一人になりたくないから……ずっと知らないフリしてきたの」
ゴメンね、と謝る彼女の瞳に薄い膜が張っていく。
それでも、涙は零さなようにと目を逸らし、少しだけ空を仰ぐ。
「……1年以上も…縛り付けて……ゴメンね」
ポロッと零れ落ちた涙は、香織さんが背を向けてしまったことで見えなくなった。
きっと、泣き顔を見せたくなかったのだろう。
そんな彼女の強がりだったのかもしれない。

