だけど、まだちゃんと終わってない。
ちゃんと向き合わなくちゃいけない人が、もう一人いるってことを忘れてはいない。
吹き抜ける風に、フワリと感じた甘い香り。
ゆっくりと視線を移せは、サラサラの髪をなびかせながら笑顔でこちらに近づいてくる人の姿を捉えた。
「香織……」
「探したわよ、雅」
彼女の瞳には、きっとあたしは映っていない。
先輩と一緒にいると決めたときから、避けては通れないと思っていた。
文化祭の間、ずっと先輩と一緒にいたのだから、当然香織さんの耳にも入るとわかっていた。
『…とらないでね。雅はあたしのだから』
あのときの香織さんの笑顔と、感情のない言葉を思い出すと胸が痛くて苦しくなる。
あのときはわからなかったけれど、先輩にお兄さんの話を聞いた今ならはっきりとわかってしまったんだ。
香織さんの瞳には、先輩の姿も映っていなかったのだと。
香織さんは先輩の双子の兄、聖さんを見つめていたのだと。

