「あたし…好きになったら、その人しか見えなくなっちゃうんです。どうしますか? 今ならまだ間に合います」
この手を離すなら、今が最後のチャンスだよ?
なんて、もうとっくに先輩に嵌まってどうにもならなくなってるくせに。
あたしの最後の強がり。
今ならまだ、この手を離しても傷は最小限ですむ。
とはいえ、あたしには大打撃だけど。
先輩が好き。
だけど、好きになりすぎてしまう自分が怖いのも事実。
昔みたいにあたしの気持ちが重すぎて、先輩に捨てられたら…って考えるだけで身体が震えてくる。
人って、そんなに簡単に変われるものじゃないと思う。
それでも、一緒にいたいって思える人に出会えたことが嬉しいのも本当の気持ち。
そんなあたしを受け止めて欲しいのは先輩だけなんだ。
「あたしは先輩が好きです」
見上げた先、フッと笑う先輩と目が合って。
クイッと上がった口角、真っ直ぐな眼差し。
「上等…」
「えっ…」
「葵も、逃げるなら今のうちだぞ? ってもう遅い。やっと手に入れたんだ。もう離してやれないから」
「先輩…」
「だから、逃げるなよ?」
「うん、逃げないし、もう…離れられないよ」

