「…知りませんでした。いつの間に撮ってたんですか?」
なかなか落ち着かないあたしの手を引いて、あの部屋にやってきたあたしたちは。
先輩に後ろから抱き締められたまましばらく窓の外の海を眺めていた。
やっと涙が止まり、グチャグチャになった顔を隠すように俯くあたしの髪を何度も優しく撫でてくれる大きな手。
背中に感じる鼓動と温もりに、心がどんどん穏やかなものへと変わっていく。
あたしの問いには答えず、目の前に置かれた一冊のファイル。
今まで見たことのないそれを、ゆっくりと開いたことで、せっかく治まったはずの鼓動がまた慌しくなる。
「…ひくだろ?」
ブンブンと首を振るのが精一杯。
ペラペラとめくっていくファイルには、あたしの写真がたくさん収められていた。
「気がついたら、こんなにも葵の写真撮ってた。無意識に、おまえをずっと追いかけてた」
海の写真はもちろん。
ここで先輩をデッサンしていたときのもの。
美術室で先輩の絵を描いていたときのもの。
それに公園でブランコに乗って空を眺めているもの。
この2週間のあたしが、この中にたくさん写っている。

