『愛しき人』
ぼやける瞳でまた写真を見上げれば、涙のせいで何も見えなくなってしまう。
涙を流し震えるあたしを、後ろからフワリと大きな腕が包み込んでくれる。
いつの間に後ろにいたの?
先輩の腕にしがみつき、その温もりを確かめる。
「俺の、【愛しいもの】だよ」
耳元でそう囁く先輩の優しい声に、小さく頷くことしかできない。
そのたびに、ポロポロと涙を零して先輩の腕を濡らしていくのに。
止められそうもない。
真っ赤な夕日と真っ青な海のグラデーションの中、涙を流すあたしの横顔。
あの日二人で行った海で、あたしは先輩のあの瞳に映ることが出来ていたんだ。

