美帆に頼まれたコーヒーを先輩に持っていくと。
眉間に寄せられたシワが、その瞬間だけ緩く解かれて。
そのかわりに穏やかな笑みを作る。
無愛想だと思った先輩が、こんなに優しい顔ができるなんて思ってなかった。
あたしの前で微笑んでくれるのは大歓迎だけど、今みたいにたくさんの人がいる前ではなんだか面白くない。
周りにいる女の子が、チラチラと先輩を盗み見しては頬を染めてたりするんだもん。
「何、ムスッとしてんの?」
「…知りません」
先輩が笑うから、なんて思わず口から零れ落ちれば。
ククッと声を殺して笑いながら、あたしの頭をクシャッと撫でた。
「もう終わる?」
「あと5分です」
「ん、じゃああと少し…我慢しとく」
そう言って、あたしにだけ見えるように優しく瞳を細めた先輩のかっこよさに、すごくドキドキする。
最後の5分、このままここにいちゃ…ダメかな?
結局、サボってることがクラスメイトにバレて。
最後の5分は馬車馬のように働かされた。
人使い荒いよ、なんて不満を口にしながらも。
自分で思っている以上に張り切っていたような気がする。

