「葵、3番にケーキ持っていってーっ」
「はーい!」
先輩と美帆が何か話しているように見えて、そっちばかり気になって気が気じゃないけど。
今はとにかく頑張って、自分の役目を全うしよう。
「葵、これ運んだら、次はこっちね」
いつの間にか仕事に戻った美帆が、コーヒーを作りながら声をかけた。
「了解。で、どこの席?」
「5番。先輩のところ」
美帆にそう言われて、ちょっとムッとした。
膨れっ面のあたしを見て、美帆は呆れたような笑みを浮かべながら。
「ボディーガードってところかしら」
「何が?」
「葵のそんな可愛い格好を見て、気が気じゃないってことよ」
気が気じゃない…って。
何言ってるの、とチラッと先輩に視線を向ければ。
こわーい顔してる先輩が目に入る。
「牽制してる、葵に近づくなって」
「ハハ、何それ。美帆の考えすぎ」
「そう? じゃなきゃ、あんなに堂々と葵の手を引きながら教室の歩く必要も、葵見つめえて優しく微笑むこともしなくていい気もするけどね」
ヤキモチでしょ、と。
まさかそんなこと…と思いならがまたそっと先輩を見てみれば、まるであたしを監視しているかのようにジーッとこちらを見ていた。
そんな先輩を目が合って、ニコリ笑って手を振る。
うん、大丈夫。ちゃんと笑えたと思う。

